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inov-8 Roclite Pro G 400 GTX V2
以前から気になっていたinov-8(イノヴェイト)のハイキングブーツRoclite Pro G 400 GTX V2。
V2のモデル名にもあるように、デビューからブラッシュアップが続けられ手配ましたが、ユーザーレビューを元に2代目へと大きく進化しています。
オールブラックのちょっと大人っぽいデザインに好感を持ち、この度ハイキング用にと購入してみました。
総合評価: 86
Roclite Pro G 400 GTX V2は、inov-8のプロダクツの中で最も頑丈なブーツであり、最も重いモデルとなりますが、市場に出回っているほとんどのハイキングブーツに比べると、圧倒的に軽いブーツであることは間違いありません。以前使用していた超軽量VASQUE BREEZE LT GTXが片足399g(9インチ)で、今回のRoclite Pro G 400 GTX V2が片足400gなので、その差は1gと超軽量モデルです。(ちなみに最新モデルのVASQUE BREEZEは 3.0にアップデートし377gになったようです。)
inov-8というブランドを知ったのは数年前で、「イノヴ?」あぁ、足のマークが「8」で「inov-eight(イノヴェイト)ね!!」というのが第一印象でした。
HOKAやALTRAなどのトレランシューズで軽快に歩いている方達をみて、とても羨ましく思ってはおりますが、ローカットで非防水というのに抵抗を感じていて、なかなか手を出せないでいたところ、トレランシューズメーカーであるイノヴァイトから、ミドルカットでゴアテックス搭載のハイキングブーツがラインナップにあるのを知り、ずっと気にはなっていました。
そんな、イノヴァイトについて
inov-8(イノヴェイト)は、トレイルラン用オフロードシューズ専門メーカーとして、2003年にイギリスで誕生しました。
裸足感覚で走れる“Natural Running”を提唱し、余計なクッションやサポートを極力省いた”素足感覚”の軽量シューズを世に送り出し、世界中のトレイルランナーからの支持を獲得。現在はトレイルランニングのみならずトレーニングやハイキングなど幅広いラインナップを展開しているとともに、その機能性とファッション性から様々なブランドとのコラボモデルも展開しています。
トレランシューズメーカーが作った軽量ハイキングブーツ
モデル名「ROC(岩)+LITE(軽さ)」の造語が示すように、2010年に発表されたRoclite 286 GTXは、当時ゴアテックスを搭載したミッドカット・ブーツとしては世界で最も軽いゴアテックス内装ブーツと評され、デビュー当時は「こんな軽いハイキングシューズがあるのか」と大絶賛されました。Roclite Pro G 400 GTX V2は、286 GTXよりハイキングにフォーカスをあてたモデルで、距離や地形を気にせずに着用できる様に軽量性と強度を考慮したブーツとなります。
以前のモデルは、ハニカム模様のスイスSchoeller社製のセラミックコーティング素材が使用されていましたが、V2ではより強度を増した素材に変更され、岩などに引っかかった際の安心感にも繋がります。
また、ライナーにはGORE-TEXを採用しているので水濡れにも安心。
縦走などでの急な雨にも動じることなく対応出来ます。
シューレースは、必要再使用限の3組の鳩目金具と2組のクイックフックで構成され、素早いフィッティングに貢献していますが、欲を言うならもう一段つま先側に鳩目金具を追加して欲しかった。私の足幅が細いので、つま先側が左右に動いてしまい心地よいフィット感が得られませんでした。
その点、ハイキングにメインで使用しているLOWAのZephyr GTX Mid TFのフィット感は抜群です。
ミドルカットの形状で、ハイカットほど窮屈感もなく足首を包み込むようなフィット感で、軽量のブーツであることを考えると、かなり良いです。
しかし、頑丈なトレッキングブーツのサポートに慣れているなら、がっかりするかもしれませんが、このRoclite Pro G 400 GTX V2に足を入れて歩き始めると、その軽量さと適度なホールド感に驚かれると思います。
踵の安定感と柔軟性を高めるカーボン製シャーシMETA-PLATE PROを搭載。
実際に歩いてみて、岩場などでは抜群の安定感を発揮。
つま先には、柔軟性がありつつもしっかりとしたラバーガードが装備されているので、岩陵帯などでも安心して歩けます。
ソールの厚みは前部12mm、ヒール側は20mmとなっており、他のハイキングブーツに比べて数値上は薄く感じてしまいますが、その薄さを感じさせない程よいクッション性は、ザレたトレイルでも小石が足裏に突き上げることなく快適に歩けるとともに、素足で歩く感覚で地面を蹴る絶妙なバランスがありました。
また、シャンクも硬さがあり、なだらかな登りからテクニカルな岩稜帯まで幅広くこなせる1足であることは間違いないです。
このモデルの最大のポイントは、「グラフェン」搭載のG グリップ。
グラフェンは鉄の200倍の強度を持ちながら、曲げ伸ばし・折りたたみが可能な「地球上でもっとも薄い物質」といわれ、Gグリップはグリップ力と耐久性を両立した画期的なソールとなっています。
このグラフェンの発見と研究によって、2010年ノーベル物理学賞を受賞した2人の博士を有するイギリスのマンチェスター大学とイノヴェイトはイギリス政府の産学協同機関を通じてグラフェンのパウダー化、そして世界で初めてスポーツシューズのアウトソールラバーにグラフェンを搭載することに成功しました。
噂ではinov-8ブーツは、ソールの減りよりもアッパーが先に消耗すると言われるほどソールは丈夫だそうです。
さらにRoclite Pro G 400 GTX V2のソールには、Meta Flex(メタフレックス)という溝が中足骨の前端部分に配置されているため、前足部からつま先を自然に曲げることができるようになてい流ので、傾斜した地形や凸凹した路面でベストな姿勢を保ちグリップ力を発揮してくれます。
実際に履いてみて
実際にRoclite Pro G 400 GTX V2を、先日行った蓼科山で履いて歩きました。
コースは樹林帯歩きに始まり、ザレ場や岩場など変化に富んだトレイルだったので、新しいブーツのテストには最適な環境でした。
まず、歩き始めて最初に感じるのは、クリップ感の良さです。
適度なシャンクの硬さがバネとなり前へ前へと推進し、スパイク形状のソールが大地をしっかりとグリップしトラクションを生んでくれます。
この日は前日の雨で岩場が濡れていたりすることもあり、グリップ力を確かめることもできました。
ハイキングブーツで広く使用されているVibram社のソールですが、濡れた岩場で滑って怖い経験を何度かしたことがあるので、このinov-8のGソールはとても優秀です。
また、オールブラックの控えめのデザインは、公共交通機関を利用して山行に出かける方には最高の一足です。
最近のハイキングブーツはどのメーカーも派手な色目が多いので、躊躇して履き替える方もいらっしゃるかと思いますが、このRoclite Pro G 400 GTX V2なら街中でもスニーカー感覚で歩けます。
欠点として、軽量化に徹したシューレースシステムの弊害と言いましょうか、特に足が細い方は最適なホールド感が得られず足が靴の中で左右に動いてしまい、その部分がマイナス要因となってしまいますが、そこは個人差があるかと思います。
先日、蝶ヶ岳から燕岳までの縦走で履き通して感じたことは、つま先側のホールド感については、逆に動いてくれた方が正しいと感じました。
というのも、つま先が靴の中で適度に動かせることにより、「地面を足指で掴む」という表現が正しいか、指先を自由に使えるので、滑りやすい場所でも踏ん張りがきくというメリットがありました。
結論として、トレッキングブーツよりも軽量でいて、トレランシューズよりも堅牢であり、様々な地形での日帰りハイキングには十分に感じます。
また、テント泊装備を担いで歩いてはいないのでなんとも言えませんが、手に取った印象では、夏のアルプス縦走などでも十分期待に応えてくれるのではないかと感じています。そこら辺のレビューはいずれ追記します。
山で軽快に歩きたい方、トレランシューズでは急な天候変化などに不安がる方にはピッタリなブーツかと思います。